エスプレッソの正しい飲み方をご存知ですか?もちろん、人それぞれお好みの飲み方があり、自分なりの楽しみ方があるでしょう。しかし、エスプレッソの本場イタリアには、正しい飲み方があります。イタリアではエスプレッソのたしなみは常識。社会人のマナーに近い感覚です。
日本での飲み方をイタリアで披露してしまったら、非常識と思われてしまうかも。「苦い」「少ない」「割高」「カフェインが多い」…そんな誤解をされがちなエスプレッソですが、そもそもイタリアでは、エスプレッソは飲み物という感覚ではありません。
エスプレッソの正しい飲み方を知ったら、エスプレッソの世界は大きく広がります。正しい飲み方を覚えて、エスプレッソの本当の魅力を最大限に味わいましょう!
イタリア流エスプレッソの正しい飲み方
日本ではエスプレッソをブラックで飲む人も多いでしょう。しかしイタリアの飲み方では、エスプレッソに必ずたっぷりと砂糖を入れます。中にはスプーンで4杯も5杯も入れる人も。
それだけお砂糖を入れるのに、あまり混ぜず、3口程度で一気に飲みます。これは抽出直後が一番美味しいから。コーヒー豆の香りや旨味がぎゅっと凝縮された、一瞬の芸術を楽しんでいるのです。エスプレッソは苦味を楽しむものではなく、香りを楽しむものなんですね。
なぜ混ぜないのか?エスプレッソとクレマの秘密
美味しいエスプレッソは3層に分かれており、一番上の層を「クレマ」と呼びます。クレマとはイタリア語で「泡」という意味。クリーミーできめ細かく、ほどよい弾力と厚みがあります。ここに砂糖を乗せると、しばらくとどまってからじんわりと底に沈んでいくのが、美味しいエスプレッソの特徴。
このクレマ、正体はコーヒー豆の中に含まれている二酸化炭素です。クレマにはエスプレッソの香りがギュッと閉じ込められているので、混ぜすぎると香りが飛んでしまいます。混ぜない分、たくさんお砂糖を入れるのが正しい飲み方なんですね。
エスプレッソの底に残った砂糖も楽しむ!
エスプレッソにたっぷり砂糖を入れても、あまり混ぜずに飲み干したら、カップの底に砂糖が溜まってしまいます。実は、これを楽しみにしているイタリアっ子も多いのです。最後に残った砂糖は、エスプレッソの苦みや酸味など、コーヒー豆の美味しさをたっぷり含んでおり、まさに上質なドルチェそのもの。
わざと多めに砂糖を入れる飲み方もいいですね。
エスプレッソの特別レシピ「クレマ・デッラ・ノンナ」
本場イタリアのエスプレッソには、たっぷりのお砂糖を入れるので、一緒にデザートを注文することは少ないようです…が、アフォガードというデザートもありますね。バニラアイスクリームにエスプレッソをかけた、イタリア生まれのドルチェです。
「エスプレッソの聖地」と呼ばれるナポリには「クレマ・デッラ・ノンナ」という特別なメニューもあります。エスプレッソに大量のお砂糖を溶かしてよく混ぜると、もったりとしたソース状になってくるのがわかります。これをジェラートにかけたりして楽しみます。
エスプレッソは新しい飲み方だった?
イタリアやフランスで「コーヒー(カフェ)」と言えば、エスプレッソのことを指します。それ以外にも、ヨーロッパではエスプレッソの方が日常的に飲まれている国も多いようです。エスプレッソが生まれたのは19世紀初頭の大陸封鎖令のころ。
ローマ最古のカフェ「カフェ・グレコ」はコーヒー豆に困窮し、エスプレッソという新しい飲み方を考案したのです。当時はコーヒー量を2/3に減らして価格を下げるというものでしたが、20世紀に入って圧力をかけて抽出するエスプレッソマシンが誕生。以来、エスプレッソはイタリア全土へ急速に広がることとなったのです。
現在のエスプレッソとは
現在、世界中で広く飲まれているエスプレッソは、20世紀に入って誕生したエスプレッソマシンによるものが原型となっています。以来、少しずつ改良が重ねられ、1960年代に入ると全自動エスプレッソマシンが登場しました。
それまでは、熟練の限られたバリスタだけが抽出できた、特別なエスプレッソでしたが、全自動エスプレッソマシンにより、エスプレッソがぐっと身近になったのです。
このエスプレッソマシンは、上記で高圧力をかけて短時間でコーヒーを抽出します。時間をかけないことで、雑味が少なく、カフェインも少なく、コーヒー豆が持つ本来のうま味、甘味、苦味、酸味、美味しいところだけがギュッと凝縮された、濃厚な風味を味わう飲み方ができますよ。
エスプレッソの飲み方は進化していく!
19世紀の時代背景から、まったく新しい飲み方として考案されたエスプレッソ。20世紀にエスプレッソマシンが誕生し、時代とともに進化をとげてきました。近年になって「シアトル系」と呼ばれるコーヒーチェーンの台頭により、エスプレッソの新しい飲み方が世界中へ拡大。
エスプレッソに生クリームやミルクをたっぷりくわえたり、大盛りのホイップクリームをデコレーションするなど、見た目にも新しいエスプレッソの飲み方です。これからのエスプレッソがどんな進化を見せてくれるのか、楽しみですね。
エスプレッソの飲み方のこだわり
エスプレッソの起源や正しい飲み方がわかってきましたが、エスプレッソにはまだまだ奥深いこだわりがあります。
エスプレッソは中深煎り豆を使う!
エスプレッソには中深煎り豆を使うのが一般的です。8段階のロースト方法の中では5~6番目の焙煎です。エスプレッソは豆の味が凝縮された飲み方なので、中深煎りを使うと最も豆の深みを味わえるとされています。
また、エスプレッソは濃厚な分、カフェインの多い飲み方であると誤解されがちですが、深煎りするほどにカフェインも揮発してしまうので、かえってカフェイン量は少なめになります。
エスプレッソの量が少ないのはなぜ?
エスプレッソは圧力をかけて短時間で少量を抽出するのが特徴の飲み方ですよね。もし量を多くしてしまうと、抽出に時間がかかり、渋味やエグ味、雑味まで抽出してしまいます。少量だからこそコーヒー豆の美味しさだけを味わえるのが、エスプレッソという飲み方なのです。
量は少ない代わりに、濃厚な後味が楽しめるのもエスプレッソならでは。
エスプレッソの聖地・ナポリの飲み方
エスプレッソはイタリアの中でも南部に行くほど濃厚なものが好まれるといいます。それだけ豆の量が多く、抽出量が少なくなるということです。イタリア南部のナポリは「エスプレッソの聖地」と呼ばれています。
その秘密は「クックマ」と呼ばれる家庭用のエスプレッソ抽出器。エスプレッソマシンが登場するずっと前から、ナポリではクックマで入れるコーヒーが主流でした。
今でも、ナポリのカフェではエスプレッソを注文すると一緒に一杯のお水が提供されます。これは、エスプレッソを味わう前に口の中をきれいにするため。エスプレッソをより味わうためのナポリの飲み方、一度試してみたいですね。
カフェ・ソスペーゾ
イタリアの人は、困った人を見ると黙っていられません。カフェ・ソスペーゾはイタリア人の優しい心づかいが生んだもので、富裕層の方が貧しい方のために2杯分の料金を払って1杯のエスプレッソを飲んで帰る、という飲み方です。
現在では少なくなったようですが、募金という形に変わって、今でもその精神は受け継がれています。
エスプレッソの飲み方アレンジ
エスプレッソの正しい飲み方を覚えたところで、次はエスプレッソの進化型飲み方にチャレンジしてみましょう。その一部をご紹介します。
「ソロ」「ルンゴ」「リストレット」「ドッピオ」
お店でエスプレッソを頼むと、「デミタスカップ」と呼ばれる通常の半分の容量のカップか、もしくは「エスプレッソカップ」と呼ばれるさらに小さなカップで出てくることがありますね。
一般的には、ソロ(もしくはワンショット)と呼ばれる量が入っています。エスプレッソ・ソロは、コーヒー豆を7~10g使って、30ml程度の抽出量です。ソロと同量の豆で、お湯の量を2倍にした飲み方は「ルンゴ」といい、通常のエスプレッソよりもあっさりとした味わいになります。
ソロと同量の豆でお湯の量を半分にした飲み方を「リストレット」、ソロ2杯分を「ドッピオ」といいます。
エスプレッソとミルクを合わせた飲み方
エスプレッソ・ソロと同じくらいのホットミルクを混ぜた飲み方を「カフェオレ」といいます。泡立てたミルクを使うと「カプチーノ」、量を少なめに入れると「マキアート」です。ラテアートや、シナモンパウダーを振りかけるアレンジもおなじみですね。
エスプレッソコンパナ
エスプレッソに生クリームをたっぷりしぼった飲み方を「コンパナ(もしくはコンパンナ)」と言います。日本ではクリームにお砂糖が入っていることが多いですが、本場イタリアやヨーロッパのコンパナには砂糖が入っておらず、エスプレッソに溶けていくまろやかさを楽しむものであることが多いです。
デザート感覚でも楽しむことができるので、ぜひ試してみてください。
エスプレッソはどんな時に飲むもの?
エスプレッソにはお砂糖をたっぷり入れて、香りを存分に楽しむのが正しい飲み方とわかりました。底に残った砂糖を楽しむのも、エスプレッソの飲み方のひとつ…と聞くと、デザート感覚で15時のおやつなのでしょうか?答えはNOです。
イタリアではエスプレッソを一日に何杯も飲みます。朝起きたときに一杯、仕事前に一杯、昼食後に一杯、休憩時に一杯、夕食前に一杯、といった具合です。そのときによって「目を覚ますため」「気持ちを切り替えるため」「一日のご褒美として」など、それぞれ別の意味が。
コーヒー豆の銘柄やブランドにもこだわりを持っているようです。日本でエスプレッソを味わうときも、ぜひこだわった飲み方をしたいですね。
エスプレッソを正しく味わおう!
エスプレッソがどういうものか、そしてエスプレッソにふさわしい正しい飲み方はおわかりいただけましたか?量は下げても質は下げない精神から生まれたエスプレッソ。今ではもっと質を上げるべく、エスプレッソはどんどん進化しています。
ぜひ一度、イタリアの正しい飲み方を試してみてください。きっと、今までとは違う新たな味わいがするはず。