「モカ」とはコーヒー用語の一つですが、その意味はわかりますか?チョコレート風味のコーヒーのこと?それともモカという銘柄のコーヒー豆のこと?それともマキネッタでいれたコーヒーのこと?実は全部正解。
特に「モカコーヒー」と言うとき、イエメンもしくはエチオピアで作られるコーヒーを指します。モカコーヒーは、世界で一番古いコーヒーブランドであり、まさに「コーヒーの女王」。15世紀に誕生して以来、今でも多くの人に愛されています。
酸味が強く、果実を思わせる独特の「モカ香」が特徴です。ちなみに、モカコーヒーにはカカオを思わせる風味があったことから、チョコレートの風味をつけたコーヒーを「カフェモカ」と呼ぶそうです。モカコーヒーをはじめ、モカのすべてを徹底的に調べました。
①モカコーヒー
「モカ」と呼ばれることもあるモカコーヒーは、コーヒー豆のブランドのひとつです。モカとは中東にあるイエメン共和国の地名で、かつては国内随一の港として栄えていました。モカの港から多くのコーヒー豆が輸出されたことから、イエメン産やエチオピア産のコーヒー豆は「モカ」と呼ばれるようになります。
なお、モカはコーヒー発祥の地とされ、その歴史はなんと15世紀にまでさかのぼります。当時はコーヒーのことを「モッカ」と呼んだほどの繁栄ぶりだったそうです。
イエメン産のモカコーヒー
モカの中でもイエメン産のコーヒーは「モカ・マタリ」といって、イエメン北西部の高地で栽培されています。フルーティでさわやかな香りと強い酸味が特徴で、「コーヒーの女王」と呼ばれ、日本でも人気があります。ストレートでよく飲まれる銘柄ですが、ブラジル産に比べると欠点豆が多く、焙煎前にハンドピックする必要があります。
『コーヒールンバ』で歌われたモカマタリ
「コーヒールンバ」という曲を聞いたことがありますか?実際にはルンバの曲調ではありませんが、1950年台後半、世界的にヒットした曲です。日本では1961年に日本語の歌詞でリメイクされ、以来多くのミュージシャンがカバーしてきました。
実は、コーヒールンバに歌われている「こはく色の飲み物」こそ、モカコーヒーのことなのです。今は逆に、モカコーヒーのような茶色を「モカ」と呼ぶこともありますね。
エチオピア産のモカコーヒー
エチオピア産のモカは、収穫地の名前がつけられた「シダモ」「ハラー」「ディマ」「レケンプティ」などがあります。苦味が少なくて酸味が強く、フルーティな香りがします。ブラジル産などの苦味が強い豆とブレンドされることが多いようです。
特にインドネシアのジャワ産ロブスタ種とのブレンドが「モカジャバ」と呼ばれ、人気があります。
モカの歴史
15世紀にコーヒーの積み出しが始まったモカの港。17世紀にはコーヒーの取引で全盛期を迎えます。18世紀にペストの流行で人口の半分が失われますが、19世紀前半まではコーヒーの工場が稼働するなど、長い間コーヒー取引で重要な位置にありました。
現在のモカ港ではコーヒー豆の扱いはほとんどなくなっています。
モカコーヒーの美味しい飲み方
モカ、つまりイエメンやエチオピア産のコーヒーは酸味が強く、果実のような香りがあり、やさしい口当たりの中に、甘味とコクを味わえるコーヒーです。酸味が特徴のコーヒーなので、中煎り程度の焙煎がオススメ。8段階のロースト方法でいえばハイロースト(4番目)~フルシティロースト(6番目)あたりです。
モカコーヒーにはハンドピックが必要
モカは最も古いコーヒーブランドですが、発祥が古かっただけに、現在のような品質管理が浸透していません。ブルーマウンテンやマンデリンなどの高級ブランドコーヒーは「300g中の欠点数が3%以内」といった厳しいグレード格付けが確立していますが、それに比べるとモカコーヒーのグレード格付けはかなり甘いです。
したがって焙煎前後にていねいなハンドピックが必要です。しかし一方で、欠点豆を取り除きすぎるとモカ香まで一緒になくなってしまうといわれており、少々ワガママなコーヒーのようでもあります。
欠点豆とは?
コーヒー豆は生豆の状態で生産地から出荷されますが、その前に小石などの異物がていねいに取り除かれており、この段階でグレードを格付けしています。その後、世界中のカフェや販売店に到着し、それぞれに焙煎されます。
中には、焙煎してみるまで欠点豆とわからないものも混じっており、これをハンドピックで取り除く作業が必要なのです。欠点豆を取り除くのは、単純に味が落ちるからです。ハンドピック次第でコーヒーの味は大きく変わるんですね。
昔ながらのモカコーヒー抽出方法
世界最古のコーヒーブランド・モカ。現在はペーパーフィルターでドリップするのが一般的ですが、モカコーヒー発祥のころは、今とは違う抽出方法だったようです。その方法とは、なんと生豆から焙煎する、というもの。
今でもイエメンやエチオピアでは昔ながらの飲み方をすることがあるそうですよ。
1.フライパンで生豆を焙煎する
焙煎する、というのはなかなか大変なので、炒り豆程度でも大丈夫です。
2.焙煎した豆を粉砕する
粗めに挽くのがモカ流。
3.ポットでコーヒーを煮出す
もちろん鍋でもOKです。
4.上澄みだけをカップに注いで飲む
コーヒーを十分に煮出したら、粉が底に沈むのを待ちましょう。
モカコーヒーはブラックで
コーヒーの中でも苦味の強いものや、コク深いものはミルクとの相性がいいですが、モカコーヒーはフルーティな酸味と甘みが特徴のコーヒーなので、できればブラックで味わいましょう。お砂糖との相性はバッチリですが、黒糖やザラメなど、独特の風味があるお砂糖は向きません。モカ香やモカ独特の酸味が消えてしまいます。
また、酸味が強いことからエスプレッソにも不向きです。ドリップか、昔ながらの煮出す方法が、モカコーヒーの魅力をもっとも引き出すことができます。
②カフェ・モカ
2つめの「モカ」は「カフェ・モカ」です。カフェモカとは一言でいうと「チョコレート風味のコーヒー」のこと。イエメン産もしくはエチオピア産のモカコーヒーを使わなくても「カフェ・モカ」は作れますが、モカコーヒーにカカオを思わせる風味があることから「カフェ・モカ」と名付けられたそうです。
カフェモカの作り方
カフェモカの材料は、エスプレッソ・牛乳・チョコレートシロップの3つです。お店によっては牛乳の代わりにスキムミルクや、生クリームを使う場合があります。また、チョコレートシロップを使うお店もあれば、ココアを使ったり、溶かしたチョコレートを使うお店もあるようです。
さらにホイップクリームをデコレーションするなど、バリエーションも様々ですが、基本的には似たような味になりそうです。
家庭でカフェモカを作ってみよう
家庭にエスプレッソマシンがない場合は、コーヒーを濃い目にいれて代用します。インスタントコーヒーを使うのも、手軽でいいですね。もしフォームドミルクが用意できるなら、お店顔負けのカフェモカが完成します。チョコレートシロップでも、ココアでも、好きなようにアレンジしてくださいね。
③モカ・エキスプレス
3つめのモカは「モカ・エキスプレス」。実はこれ、イタリアの家庭用エスプレッソメーカー・ビアレッティ社の登録商標なんです。「直火式エスプレッソ」と言うとわかりやすいかもしれません。日本では「マキネッタ」という通称で呼ばれています。
イタリアで「モカ」と言うと、このマキネッタで入れたエスプレッソのことを指すのだとか。でもイタリアのカフェや喫茶店でエスプレッソを飲みたいときは「カフェ」と呼んで区別しており、エスプレッソマシンで抽出されたものを指します。日本では特に区別せず、どちらも「エスプレッソ」と呼ぶことが多いですね。
モカエキスプレスはエスプレッソではない?
「直火式エスプレッソ」の通称でおなじみモカ・エキスプレスですが、本来、エスプレッソとは高圧抽出されたコーヒーのことを指します。モカエキスプレスを使っていれた「モカ」は、たしかにドリップコーヒーよりは濃厚ですが、本場イタリアではエスプレッソとは別物。
だからこそ「モカ」と呼ばれているのです。とはいえ、モカエキスプレスが誕生した背景にあるのは「家庭でエスプレッソを楽しみたい」という思い。今では一家に一台が当たり前のアイテムです。
モカコーヒーを楽しもう!
モカコーヒーとは、世界最古のコーヒーブランドでした。「モカ」の言葉がコーヒーそのものを意味していた時代もあったように、モカ・エキスプレスのネーミングも、そこから来たものかもしれません。
一見モカコーヒーとは関係なさそうなカフェ・モカも、モカコーヒーの風味をイメージした飲み方でした。コーヒー誕生から現在に至るまで世界中で親しまれているモカコーヒー。一度ゆっくり味わってみたいですね。