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コーヒーのルーツ「モカマタリ」とは?入手困難と価格高騰のワケ

コーヒー豆

 

2018.10.21

モカマタリというコーヒーをご存知でしょうか。独特の甘くて澄んだ香り、ブルーベリーやオレンジなどに例えられる豊かな酸味、そしてまろやかなコクが特徴ですが、後味が驚くほどさわやかで、とても気品ある味わいです。

日本人は酸味の強いコーヒーは苦手と言われますが、モカの酸味は日本人にも好まれやすい酸味で、ストレートで飲むのもオススメです。「コーヒールンバ」に歌われたコーヒーであるとされ、国内でも根強い人気があります。

モカコーヒーの中でも最高級品にあたるモカマタリは、イエメンの急斜面を利用した段々畑で作られています。現在は内戦の影響で入手困難となっているモカマタリですが、美味しい飲み方や歴史などについてご紹介します。

モカとは?

エチオピアはコーヒー発祥の地と言われています。その昔、エチオピアでとれたコーヒーは、すぐそばにあるイエメンのモカ港から世界中に出荷されていきました。以来、この辺りでとれるコーヒーは「モカ」と呼ばれるようになります。

モカとはコーヒーのルーツであり、世界最古のコーヒーブランドなのです。現在では、エチオピア産やイエメン産のコーヒーをモカと総称しますが、品種改良の手が入っておらず、500年前とほとんど変わらない味であると言われます。

いずれも「モカ香」と呼ばれるフルーティな香りが特徴で、酸味、甘み、コクのバランスがとれた味わいです。

モカマタリの栽培

イエメンの中部山岳地で栽培されているモカマタリは、昔ながらの農法が受け継がれています。標高は1,000~3,000mほどと、かなり傾斜のきつい地域。先祖伝来の土地を守り、コーヒー発祥のころから脈々と続いていることから「クラシック・モカ」と呼ばれることもあります。

エチオピア産に比べるとコクが強く、さわやかな後味が人気の秘密です。ワインのような風味と評価されることもあります。

モカマタリとイエメン内戦

イエメンでは現在、イスラム教のシーア派とスンニ派の対立による内戦が続いています。これによりモカマタリの生産や出荷が難しくなっているようです。輸出許可が出ないために港に山と積まれているモカマタリの映像は、テレビなどで見たことがある人もいるかもしれません。

同時に、イエメンが平和を損なう行為をしているとして、イエメン製品の輸入制限など経済制裁を課している国々も多く、日本の経済産業省でもイエメンとの貿易を制限しています。このため日本でモカマタリの値段が高騰しつつあります。

モカマタリとカート

モカマタリが入手困難になっている理由がもう一つあります。それはカートへという作物への転作です。イエメンはイスラム教の社会で、お酒を飲まない代わりに、カートやタバコなどの嗜好品が好まれます。しかし近年タバコの害が指摘されるようになって、タバコよりもカートの需要が高まっています。

カートとは興奮作用のある葉っぱで、多くのイスラム国家では禁止されていますが、効果は弱く、イエメンでは法規制されていません。また、カートはコーヒーと生育条件がほぼ同じで、一年中栽培が可能です。年に一度しか収穫できないコーヒーに比べると、カートのほうが、と考える農家も出てくるというわけです。

モカマタリの美味しい飲み方

一般的にコーヒーは、欠点豆の混入数でグレードが決まる方式になっていますが、イエメンのコーヒーにはグレード分けがありませんので、焙煎前後にハンドピックが必要です。しかし発酵豆の一部がモカ香りのもとになっているともいわれているので、あまりハンドピックしすぎると、かえってモカらしさが失われてしまうようです。

焙煎度については、深煎りにするとモカ香や酸味が飛んでしまいますので、中煎りがベスト。「コーヒーの貴婦人」と呼ばれる華やかな味わいを楽しんでください。

昔ながらのモカマタリ抽出方法

モカマタリをもっと美味しく飲むために、昔ながらのイエメンに伝わる飲み方を試してみませんか?生豆を入手したらぜひ試してみてください。フライパンで焙煎してから粗めに粉砕し、鍋やポットで煮出すという方法です。上澄みだけをカップに注いで飲みます。

いつもと違って素朴な味わいを楽しめますよ。

モカマタリ以外の「モカ」

本来はモカマタリも、イエメンのバニーマタル地区で栽培されたことから、「モカマタリ」の呼び名がついたと言われます。現在は、イエメン産のコーヒーであれば、バニーマタル地区以外のものでも、全て「モカマタリ」と呼ぶことが多いです。

ほかにもいろいろなモカがありますので、調べてみました。

ゴールデンマタリ(バニーマタル)

モカマタリの中でもバニーマタル地方だけに限った品種を、ゴールデンマタリと呼ぶことがあります。特に原生種に近く、金色の豆が入ることがあるので、ゴールデンマタリの名がつきました。

素朴でありながら気品のある味わいで知られていますが、ほとんどがイエメンとサウジアラビアの王室で消費されてしまうので、日本で入手するのはとても難しいです。

モカ・イスマイリ

モカの中でも最高級品として知られ、アラビアの王侯貴族用となっていたのがこのイスマイリです。スモーキーでスパイシーな香りに、チョコレートのような味わいと濃厚なコクがあります。ほかのコーヒーにはない複雑な香りが特徴です。

モカ・ハラーズ(ハラズ)

イエメンのハラズ山脈で作られるモカで、フルーティな香りと強い甘味が特徴です。ナッツのような香ばしさとハーブのようなさわやかな後味です。コーヒーとは思えないほどの甘味には、きっと驚くハズ。

モカ・シダモ

エチオピアを代表するコーヒー産地の名前が、そのままつけられています。標高2,000メートル以上の高地で栽培されており、甘い香りと滑らかな酸味が特徴です。深煎りにするとしっかりとした苦味を感じ、甘いモカ香を楽しむことができます。

ほかのコーヒー豆とブランドされることも多く、チョコレートのような風味が際立ちます。

モカ・ハラー

エチオピアモカのなかでも最高級品と称されるのがモカ・ハラーです。エチオピアは国民の半数以上がキリスト教信者ですが、ハラー地区はモスクも多く、巡礼者が訪れるなど、イスラム教のカラーが強い地域です。世界遺産「ハラール・ジュゴル」で有名な地域でもあります。

モカの中では酸味が少なく、強い甘味が特徴です。

イルガチェフェ

エチオピアのイルガチェフェ地区で収穫されるコーヒーで、甘味が強く、花のようなみずみずしい香りがあります。モカの中では珍しく水洗式のコーヒーで、フレッシュでさわやかな後味です。

イエメンってどんな国?

 

モカマタリのふるさとイエメン共和国は、中東のアラビア半島南端にあります。地図を見るとわかりますが、紅海を隔てたすぐ反対側にアフリカ大陸があり、エチオピアもまたすぐそばに位置しているのがわかります。

イエメンは古代から交易の中心地として栄え「幸福のアラビア」と呼ばれた地域でもありました。イスラム国家ではありますが、部族ごとの結束が固く、イスラムの教えよりも部族のしきたりが優先されることも多いとか。

ブンとキシル(ギシル)

日本でいうコーヒーのことを、イエメンでは「ブン」と呼びます。先に述べたような、コーヒー豆を煎って砕き、煮出したものをいうのですが、イエメン国内ではあまり飲まれません。イエメンは石油資源が乏しく、他のアラブ諸国と比べると著しく貧しい国です。

国内で生産されたコーヒー豆はほとんど輸出に回してしまうので、代わりにキシル(ギシル)と呼ばれる飲み物がよく飲まれています。キシルは、脱穀したコーヒーの殻を焼き、ブンと同じように煮出したものです。砂糖やシナモン、カルダモンなどの香辛料を加えて飲みます。

モカの味が知られていないなんて、なんだか残念ですね。

コーヒーより紅茶

イエメンで人気があるのは、なんとコーヒーより紅茶。と言っても、私たち日本人も日本茶ばかり飲んでいるわけでもありませんし、そういうものなのかもしれません。イエメンは大きく4つの地域に分けられますが、地域によって食べ物や生活スタイルに個性があります。

イエメン西部だけが降水量が多く、ここでモカマタリが作られています。ほかの地域は砂漠がほとんどで、一部に遊牧民が暮らしていますが、昼夜の気温差が30度を超える地域もあり、定住は難しそうです。

モカマタリはコーヒーのルーツ

コーヒーの原点ともいえるモカマタリ。モカマタリ独特の甘い香りや複雑な味わい。安定的に楽しみたい、というのはもちろんですが、それよりも生産地や現地の方々を思うと、心が痛みます。一日も早く平和が訪れてほしいですね。これからもモカマタリの味を受け継いでくれることを願います。

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