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コーヒーの実は食べられる?コーヒーの実がコーヒーになるまでの物語

コーヒー豆

 

2018.10.06

「コーヒーの実」と聞いても、多くの方は、なんのことだか分からないかもしれません。ふだん飲んでいるコーヒーは、コーヒー豆からいれますよね。コーヒー豆をつくるコーヒーノキは、赤道付近の地域でさかんに栽培されています。

年に一度、雪のように真っ白な花を咲かせた後、緑色の小さな実ができて、少しずつ大きくなりながら、赤く色づいていきます。大きさも見た目もさくらんぼソックリなので、コーヒーチェリーと呼ばれており、このチェリーの中にコーヒーの種、つまりコーヒー豆が入っているのです。

果肉を取り除き、乾燥した種を生豆(グリーンコーヒー)、焙煎したものがコーヒー豆となります。ところで、取り除いた果肉はどうするのでしょうか?コーヒーの実について、詳しく調べてみました。

コーヒーの実をつける「コーヒーノキ」とは?

アカネ科の常緑樹コーヒーノキは、野生だと10メートルもの高さに成長するといいますが、コーヒー農園では収穫にそなえ、2~3メートル程度に管理しているそうです。星型の花はジャスミンのような甘い香りを放ち、時期が来ると農園中がいっせいに開花。まさに雪化粧そのものです。

この時期は日本人が桜をめでるように、地域の人がこぞって花見に訪れ、にぎやかな宴会が開かれます。しかし、そんなにぎやかな時期はほんのわずか。花は咲いて2日もすれば散ってしまいます。

コーヒーの花見の後、6~9カ月かけてコーヒーチェリーは赤く熟していきます。

赤くなくてもコーヒーチェリー

一般には真っ赤なものが一般的ですが、中には黄色いコーヒーの実もあり、「アマレイロ」と呼ばれます。ほかにも濃い紫色の実や、ピンク、オレンジなど、様々なバリエーションがあり、すべて品種の違いによるものです。色とコーヒーの味には関係性がありません。

コーヒー豆の味を決めるのは、気候・土壌などの生育条件や、果肉を取り除く精製方法によるところが大きいです。また、色づく前の緑色の実はオリーブそっくり。油分も含まれているんですよ。

コーヒーの実の中ってどうなってるの?

コーヒーの実の中に種、つまりコーヒー豆が入っているということはわかりましたね。エンドウ豆やピーナツなどをイメージするとわかりやすいですが、一般的に「豆」と呼ばれるものは、2つに割れるようになっています。

コーヒー豆も同様で、コーヒーの実の中に向い合わせに2つのコーヒー豆が入っているのです。中には1つしか入っていなかったり、3つの豆がギュウギュウに詰まっていることもあります。栗をむいて食べたことがある方なら、そんな経験もあるのでは。

コーヒーの実は食べられる?

とても残念ですがコーヒーの実の中は、ほぼ種。果肉が非常に少ないのです。加工前の種は固すぎるので、種以外の果肉だけであれば食べられます。気になるお味は、品種による違いもありますが、じっくり9カ月待って完熟させると、かなり甘くなるそうです。

コーヒーの甘味の由来は、まさにここからきているのだとか。現在でもエチオピアではコーヒーの実を食べる習慣があるようです。

食用としてのコーヒーの実

エチオピアはアラビカ種コーヒーノキの原産地とされており、現地の人は古くからコーヒーの実を煮て食べていました。現在でもエチオピアではコーヒーの葉をつかった「アメルタッサ」や「カティ」というお茶がよく飲まれます。

オロモ族の間には「コーヒーつぶし」という儀式が残っており、誕生日のお祝いにつぶしたコーヒー豆と大麦をバターで炒めるそうです。これを丸めてだんご状にしたものを携帯食として用いていた例もあります。

コーヒーの実がコーヒーになるまで

はじめは赤い実を食用としていたコーヒーの実ですが、現在ではまったく異なる飲み方をされています。もはや食べ物ですらない…。現在のようなコーヒーがどのように生まれたのでしょうか?

9世紀には乾燥させたコーヒー豆をすりつぶして煮汁を飲んでいた記録があります。当時「バンカム」と呼ばれ、イスラム寺院で徹夜修行の秘薬として用いられていたとか。やがて「欲望を減退させる飲料」という意味の「カフワ」という名がつけられました。

焙煎とコーヒー人気の高まり

13世紀に入ると、コーヒー豆は焙煎されるようになりました。なんらかのアクシデントでコーヒー豆が焼けてしまい、そのときに大変いい香りがしたのがきっかけです。焼けたコーヒー豆から抽出されたものは、いかにも薬らしいカフワと比べ、風味がすぐれた嗜好品そのもの。

しかしカフワを宗教的儀式に用いてきたイスラム社会は、一般の使用を弾圧します。コーヒー人気はそんな弾圧にもめげず、16世紀にはコーヒーハウスが誕生。そのころはカフワをトルコ語読みにした「カフヴェ」と呼ばれていました。

世界中に広がるコーヒー

17世紀に入り、とうとう心折れたオスマン帝国がコーヒーの一般使用を認めます。17世紀半ば、ロンドンにヨーロッパ初となるコーヒーショップがオープンしたのをきっかけに、ヨーロッパ全土へコーヒー人気が拡大。

17世紀末にはロシア、19世紀にはアメリカへと広まっていきます。なお、日本へコーヒーが持ち込まれたのは18世紀末ころと言われていますが、庶民に広く受け入れられたのは20世紀に入ってからです。

ドリップコーヒーの誕生

まずはそのまま食べられて、種をすりつぶしたりして食べられていたコーヒーの実ですが、時代が下るにつれ、お茶として煮出されたり、焙煎という工程が加わるなど、少しずつ進化してきました。しかし今のようなドリップ式が生まれたのは19世紀に入ってから。

金属製のフィルターの底に小さな穴がいくつも空いた、ドリップポットが考案されたのをきっかけに、ネル(布)ドリップ、ペーパードリップ、パーコレータ、サイフォンなどなど、多くの飲み方が考案されました。

コーヒー伝説の数々

コーヒーの実は、なが~い歴史をかけて現在のようなコーヒーになりました。その途中、一般使用が禁止されたり、戦争により供給が途絶えたり、類似品で代用したりと、つらく苦しい時期が何度もありました。そんな時期に生まれた「コーヒー伝説」をご存知でしょうか?

多くは脚色が入り、事実と異なるものも多いようですが、人々がコーヒーに抱いた憧れが表現されたものですので、伝わっているままにご紹介していきます。

ヤギ飼い「カルディ」の伝説

9世紀のエチオピアにカルディというヤギ飼いがいました。ある日、ヤギの一頭が興奮した様子で飛びまわり、夜になっても落ち着きません。その原因が赤い実だとわかり、カルディも同じように赤い実を食べてみたのです。

すると、たちまち元気が出て気分が爽快になったということで、修行僧の夜勤にすすめたところ、これが大評判になったという伝説です。

悪魔の実を焼いてみた伝説

コーヒーの実は確かに夜勤のおともに最適。しかし、どうやら興奮する作用もあるとわかり、修行僧たちは「悪魔の実」としてコーヒーの実を焼いてしまいます。すると、なんとも言えない素晴らしい香りが漂ってくるではありませんか。

「もう一度だけチャンスをやろう」と、コーヒーを抽出してみたら、これまた素晴らしい風味。結局のところ、悪魔の実にとりつかれてしまい、一般使用はあまりにも危険と考えたため、修行僧限定の秘薬とした…という伝説です。

コーヒーを隠そうとした伝説

コーヒー豆を十字軍に奪われそうになったイスラム僧侶が、あわてて暖炉に生豆を放り投げて焼き捨てようとした、という伝説です。焼き捨てるつもりが、焼けた豆からはいい香りがしたため、拾い集めて砕いて湯を入れて飲むと、その美味しさにビックリ!

これを機に焙煎が広まり、焙煎と一緒にコーヒーの実がヨーロッパへ持ち帰られたとか。

山火事と焙煎の伝説

いまだ野生のコーヒーノキが見られるエチオピアでは、5メートル以上の高さに育ったものもよく見られます。しかし人間が収穫できるのは、がんばっても3メートルくらいまでが限界。それ以上のところにできたコーヒーの実は、そのまま放っておかれます。

あるとき山火事があり、焼け跡から出てきたコーヒーの実が、焼けていてこうばしい香りがしたため、持ち帰ってみると…という伝説です。

オマール伝説

かつてモカで病気が流行ったとき、美しい王女の看護についたのが、イスラム修道者のシェーク・オマールでした。しかし王女に恋心をいだいたと疑いをかけられ、モカから追放されてしまいます。

山の中で食べるものがなく、空腹にあえいでいたとき、不思議な鳥に導かれて赤い実を見つけました。これによりオマールは心身をすこやかに保ち、その様子に驚いた町の人にコーヒーの実を広めます。これがきっかけで赦免され、町に戻ることもできた、という伝説です。

コーヒーの実を見つけたらぜひ味見してみよう!

古くから食用として親しまれてきたコーヒーの実。現在のようなコーヒーとなるまでには様々な歴史があったんですね。最近は日本でもコーヒー農園がいくつかありますので、コーヒーの実を食べてみるチャンスがきたら、ぜひ試してみてください。コーヒーの味のヒミツがわかるかも?自家栽培にチャレンジしてみるのも楽しそうですね。

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