コーヒーはカフェイン量が多いことで有名ですね。そもそも、コーヒー(coffee)から分離されたことから、カフェイン(caffeine)と命名されたのだとか。カフェインは、目を覚ましたり、集中力を高めてくれる働きがある一方、取り過ぎると体に害となることもあります。
では、どれくらいまでのカフェイン量なら安全なのでしょうか?日本ではまだ、カフェインの摂取基準は設けられていませんが、海外では1日に400mg未満、としているところも。これはドリップコーヒーでいうと、4~6杯分にあたります。
とはいえ、カフェインが含まれているのはコーヒーだけではありませんし、コーヒーの入れ方によってもカフェイン量は変化します。カフェイン量について詳しく調べてみました。
カフェインの摂取基準量
コーヒーを飲むと、30分くらいでカフェインが効き始め、3~4時間は効果が持続すると言われます。効果がなくなってからも、体内にカフェインは残っており、完全に効き目がなくなるまでには、10~14時間ほどかかります。
ヨーロッパやカナダでは、成人は1日に400mgまで、子どもは90mg、妊婦は200mgまで、というカフェイン量の基準が設けられています。
カフェイン中毒って?
カフェインに摂取基準量がもうけられているのは、やはり副作用のためですね。常用すると依存性が出たり、取り過ぎるとカフェイン中毒の危険もあります。
1時間以内に6.5mg/kgのカフェインを摂取すると5割の確率で、3時間以内に17mg/kgのカフェイン量で重篤な症状が出てきます。具体的な数値にすると、体重60kgの人なら1時間でドリップコーヒー5杯程度、3時間で10杯以上です。
カフェインをとらないほうが良い人
まれに、体質や病気との相性が悪く、生まれつきカフェインに過敏に反応してしまう方がいます。特にうつ病や不安障害をわずらっている方は注意が必要です。
また、日本人よりも欧米人の方がカフェイン耐性が低いと言われており、アルコールや炭酸と同時に摂取する場合は、特に注意が必要です。心配な方はカフェインレスコーヒーに切り替えるのもいいかもしれません。
飲料・食品とカフェイン量
カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶、ココア、チョコレート、エナジードリンクなどに含まれているほか、医薬品に用いられることも。風邪薬の有効成分をよく見ると、無水カフェインと表示されていることがあり、この場合、カフェインは鎮痛補助の役割をしています。
- 玉露…144mg/90ml(小湯のみ3杯分)
- ドリップコーヒー…90mg/150ml(コーヒーカップ1杯分)
- レッドブル…80mg/250ml(1缶分)
- 抹茶…48mg/70ml(1杯分)
- 紅茶…45mg/150ml(ティーカップ1杯分)
- ウーロン茶…30mg/150ml(きゅうす1杯分)
- コカ・コーラ…34mg/355ml(1缶分)
- 煎茶…24mg/120ml(大湯のみ2杯分)
- ココア…14mg/150ml(1杯分)
- ミルクチョコレート…10mg/1枚
よくある100mlあたりのカフェイン量ではなく、一杯分のカフェイン量を調べてみました。玉露のカフェイン量はかなり多いですが、茶にはタンニンが多く含まれており、カフェインと結びつくため、コーヒーと比べてゆるやかに作用します。
また、コーヒーの入れ方によってもカフェイン量は異なります。
コーヒーの入れ方とカフェイン量
コーヒーのカフェインは、抽出時間が長くなるほど多く抽出されます。また、焙煎や挽き方によっても違いがあり、浅煎りになるほどカフェイン量が多く、細挽きになるほど多く抽出されます。
エスプレッソはカフェイン量が多いイメージがありますが、深煎り豆を使うことと、短時間で抽出すること、1杯の量が少ないことから、ドリップコーヒー1杯よりも少ないという結果に。
また、抽出時の温度が低いとカフェインが溶け出しにくくなる半面、抽出時間をかなり長くとる必要があるので、水出しコーヒーのカフェイン量はエスプレッソ1杯と同程度となります。
- ドリップ…90mg/150ml
- インスタント…86mg/150ml
- 水出し…65mg/150ml
- パーコレータ…60mg/150ml
- エスプレッソ…60mg/30ml
- カフェインレス…10mg/150ml
ここで一点だけ気を付けるポイントがあります。焙煎時間が長くなると、その分カフェインが揮発しますが、豆の水分が飛ぶので、一粒一粒の重さが軽くなります。
深煎り豆1粒と、浅煎り豆1粒を比べると、浅煎り豆の方がカフェイン量が多くなりますが、10gという単位で見ると、深煎り豆の方が軽い分、数が増えます。
結果的に、焙煎度の違いでは、カフェイン量にさほど変化はない、と言えそうですね。
カフェインレスコーヒー(デカフェ)
「レス」とは「少ない」という意味なので、カフェインレスコーヒーであっても、カフェイン量がゼロではありません。とはいえ一般的なコーヒーに比べれば「ない」と言ってもいいほど少ないですね。
カフェインレスコーヒーは、生豆をカフェインが溶けやすい液体に浸しておく、という方法や、二酸化炭素で圧力をかけてカフェインを抽出する方法などで製造しています。
また、コーヒーノキの段階で、すでにカフェインの少ない品種を作る試みもありますが、まだ実現には至っていません。
有機溶媒抽出
最初に考案されたカフェインの抽出方法で、カフェインが水よりも油に溶けやすい性質を利用したものです。コーヒーの生豆を蒸気でふっくらさせ、カフェインを抽出しやすい状態にしてから、有機溶媒に浸します。
溶媒にはジクロロメタン(塩化メチレン)を用いることが多いですが、安全性に懸念があり、デカフェ製造にはあまり使われていません。
水抽出
コーヒーの生豆を水に浸し、カフェインだけでなくほかの成分も一緒に抽出します。抽出した溶液からカフェインだけを取り除く処理をしたのち、ほかの成分だけを生豆に戻すといった方法です。生豆が直接溶媒に触れることがないので、安全性の高い方法です。
超臨界二酸化炭素抽出
現在、主流となっているデカフェの製法で、圧力を加えて液状にした二酸化炭素を用います。二酸化炭素を個体にしたものをドライアイスと言いますが、その直前の段階ですね。
液状の二酸化炭素はコーヒー豆の内部に浸透しやすく、カフェイン以外の成分と反応しにくいといった利点があり、もし生豆の中に残存したとしても毒性がなく安全です。
遺伝子組み換えとカフェインレスコーヒーノキ
技術が日進月歩する現在、コーヒーの品種改良に遺伝子組み換え技術が導入されています。2003年に日本の研究室が、カフェインの少ないコーヒーノキの開発に成功しましたが、残念ながらロブスタ種を用いていたことと、カフェイン量が1/3にしかなっていなかったのです。
もしアラビカ種で成功していれば、世紀の大発明になっていたかもしれませんね。
コーヒーの種類とカフェイン量
カフェイン量は、コーヒーの銘柄や種類によっても違いがあります。一般に、ロブスタ種はアラビカ種の2倍カフェイン量といわれ、缶コーヒーやインスタントコーヒーに用いられています。精製方法の違いでは、あまりカフェイン量は変わらないようです。
ブルボン・ポワントゥ
アラビカコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」は、レユニオン島(旧ブルボン島)で作られるコーヒーです。レユニオン島は、アフリカ大陸南東部マダガスカル島からさらに東、外周250kmほどの土地に、約84万人が暮らしています。
「ポワントゥ」とはフランス語で「とがった」という意味ですが、その言葉通り、細長くとがった形の豆をしています。ポワントゥはカフェイン量がアラビカ種の半分しかなく、フルーティな香りと透明感のある味わいが特徴です。
ローリナ
ブルボン・ポワントゥを、ブラジルに持ち込んで栽培したものがローリナです。ナッツやプルーンのような香ばしくてフルーティな香りがあり、苦みや酸味は少なめ。ポワントゥよりも小型の豆になっています。
また、イエメン・モカを品種改良した「モカ・イバイリ」も、カフェイン量が通用のアラビカ種の半分しかありません。
マウイ・モカ
ブラジルのモカ・イバイリをハワイ島に持ち込んだ品種です。イエメンのコーヒーがエルサルバドルに持ち込まれたのち、ブラジルを経由してハワイに到着。はるばると旅をしてきたコーヒーです。残念なことに、カフェイン量は通常のアラビカ種と同程度なんだとか。完熟した赤ワインのような甘味が特徴です。
ヴァリエダ・ローリナ
ローリナ同様、ブルボン・ポワントゥを、中米のコーヒー大国ニカラグアへ持ち込んで栽培したものです。ヴァリエダはスペイン語で「種」、ローリナはフランス語で「月桂樹(ローリエ)」という意味。
オレンジピールのようなさわやかさがあり、マーマレードやチョコレートのような濃厚な甘味があります。
コーヒーのカフェイン量はそんなに気にしなくても大丈夫!
コーヒーは3時間に10杯などと大量に飲まない限り、中毒症状で心配する必要はありません。1日に多くても4~5杯ではないかと思うのですが、みなさんはいかがでしょうか?エナジードリンクなどを好んで飲む方は、気を付けた方がよさそうですね。
これで思う存分、毎日のコーヒーブレイクを楽しめそうです。